MENOPAUSE
AGE IS NOT AN OBSTACLE TO LIVE THE FUTURE.
理事長 小山嵩夫
健康増進 ―実現に向けて―
高齢社会の到来とともに、より元気に若々しく過ごすことに関心が集まっています。領域としては健康面(医学)、経済面、生きがい(社会参加)などが挙げられますが、ここでは健康面について考えてみたいと思います。
よく定年前後の人たちが年に1回の人間ドックを受診し、体重や血圧などのコントロールで2か月に1回位通院し、軽い投薬などを受けているので、健康面は問題ないと話しているのを耳にします。これは健康増進から見ると病気の早期発見と初期治療を受けているにすぎません。
このようなケースがわが国でめずらしくないのは健康増進についてほとんど理解されていないことが第一の理由であり、医療保険制度の存在との関与も考えられます。制度内では医療は原則として治療に限るとされています。ドックも拡大解釈をすれば病気の発見のための検査であります。一方で、健康増進は、現在の健康度を推測し、より元気に過ごすための方法を考えていくことであり、病気の治療に限定されている現行の医療保険の適応はかなり困難といえます。
健康増進を推進するためには健康度の評価の方法や健康度を増進させるための方法を工夫していくことであり、その対応も病気に対する投薬、手術などとは異なり生活習慣の工夫など現状の医療とは異なった領域が予想されます。そのため、これから少しづつ発展させていくべき分野といえます。この概念は、国民には理解されやすいため、理解者からの指示も期待できることから啓発活動が重要な意味を持ってきます。まずは、健康増進の意味を国民に理解してもらうことが重要であり、さらには国民への啓発だけでなく、医療の現場で実践できる人材の育成や医療制度の整備、また、この領域における医学的データの蓄積なども今後の課題となります。
健康増進が重要視されるためには、わが国の目的の1つでもある長寿について、生きている間の生活の充実性も評価する必要があり、健康増進はこの考え方を採用したものといえます。この概念の普及は医療費を減らし、個人個人の活動、元気さに貢献することが予想されますが、医療者側からみた場合、医療費の減少は売上減につながり、必ずしも歓迎されるわけではなく工夫が必要となります。
また、この領域は、予防、QOLの向上、元気さの維持を目的としており、生活指導などが対応の中心といえます。医師以外のいわゆるコメディカルや関心のあるすべての人が、主体性をもって参加していくことが予想され、わが国の医療の大きな転換を示唆しているといえます。国民の健康向上への貢献とともに医学教育、医療の内容、医療従事者の仕事内容、医療経済などに大きな変化を与えていくでしょう。