MENOPAUSE
AGE IS NOT AN OBSTACLE TO LIVE THE FUTURE.
学会理事長 太田 博明
本学会は既に健康寿命世界一であるわが国の女性の健康寿命の一層の延伸を目標に掲げます!
この度本学会を創設され、20年以上の長きに亘り理事長としてご牽引されてきた小山嵩夫先生から理事長職を辞したいとの申し出と、次期理事長を不肖私にご依頼いただきました。私は年齢でもあり、現在のところ在京ではありませんので、お引き受けし難かったのですが、小山先生が掲げた女性医療の神髄である『更年期と加齢のヘルスケア』を目指す唯一の学会としての灯の存続を心から願っており、あくまでも次世代への橋渡し役として、図らずもお引き受けさせていただいた次第です。なお、小山先生には創設理事長として、今後も高所大所からご指導をいただくことになっております。
One Pointではありますが、お引き受けさせていた限りは目標を定めたいと思います。既にわが国の女性は健康寿命世界一ではありますが、同様に世界一の生命寿命に比し、必ずしも十分な健康寿命を達成しているとは言えません。そこで、多領域・多職種から成り、更に女性会員が多い本学会員の構成から、この領域に対するリテラシーを一層醸成して、わが国の女性の『健康寿命のさらなる延伸のinitiative』を本学会が一丸となって掲げて目指し、わが国の方向性をリードして参りたいと考えています。
女性の疾病や健康に対するサポートの在り方が大きく変わりつつある中で、female(女性)とtechnology(テクノロジー)やそれに当てはまらない各種のcare(ケア)を掛け合わせた造語であるFemthechやFemcareには女性の健康課題を新たな手法で解決を目指すプロダクトや産業全体の取り組みまでを含みます。健康課題としては主に「月経、妊娠・不妊、産後ケア、更年期、婦人科系疾患、セクシャルウェルネス」の6分野と多岐にわたります。
しかし、女性の人生晩年の健康格差は大きく、その最大の要因は骨の骨粗鬆症化です。 骨粗鬆症化によりサルコペニアが誘発され、易転倒性となり、骨折を来し、フレイルによる要支援・要介護を要し、健康格差は更に拡大し、生死にも関わります。これらの一連の肝腎要な虚弱高齢者(フレイル)が健康課題に取り上げられていないのはこの領域をライフワークとしているものにとっては腑に落ちません。
特に骨粗鬆症による大腿骨骨折は癌・脳卒中・心筋梗塞と同等のAttackにてQOL低下と医療費や生命予後も同等のインパクトとなるので、骨の些細な老化の兆しである骨量低下を見逃さないことが骨粗鬆症をはじめ、サルコペニア・フレイルを予防し、ひいては要支援・要介護を回避する決め手になると考えています。
一方でなぜ今、Femthechのニーズが高まっているのか。その背景には、女性を取り巻く社会環境と生物学的な機能にギャップが生じていることに起因するかと思います。女性の社会進出が進み、少子化が喫緊の社会的課題と言われて久しいのですが、月経や更年期をはじめとする生物学的女性としての生理機能へのリテラシ―の低さは女性自身も社会的にも残念ながら殆ど変わっていません。加えて症状に対する診断や処置は医療機関の専門分野ですが,日本の現在の枠組みでは「受診するほどではないが、不安や疑問に思っていること」を専門家に相談できるシステムが十分に整備されていません。これらを解消するための取り組みと、医療機関受診の前後をサポートし得る点などが今後のFemthech・Femcareに期待される部分だと考えています。
そして、わが国の高齢者数は20年後の2042年に3932万人とピークに達します。そこで、本学会の「メノポーズ・カウンセラー」の対象者の高齢者版である更年期のNext Stageに対するアドバイザーの必要性が20年後に切迫してくるのは必至であると思っています。
可及的速やかにこのアドバイザーの新設を今から図る必要があるなど、本学会の存在の意義と果たす役割は今後もますます重要になってくるはずです。そこで会員の皆様のご賛同が得られれば早速、研修担当理事を中心として、理事・幹事の方々とNext Stageに向けてのアドバイザー制度の確立と養成へ向けての取り組みを開始したいと思っております。
会員の皆様のご支援を何卒よろしくお願いいたします。
2023年8月15日
川崎医科大学 産婦人科学
川崎医科大学 総合医療センター産婦人科
太田 博明